12年間の活動史

徳島大学工学部電気電子工学科
大野泰夫研究室の研究アーカイブ
(2001.2~2013.3)

私、大野泰夫は2001.1にNEC筑波研究所を退職し、徳島大学工学部電気電子工学科に着任した。着任時から中国河北半導体研究所からポスドクとして来日した敖金平氏(現:准教授)と組んでGaN系電子デバイスの研究に取り組んだ。研究テーマはGaNデバイスの応用とコラプスなどの不安定性の解明である。画期的な進展は無かったが、振り返ると着実に進展してきたといえると思う。
学会で公開した論文は、無駄をそぎ落とした報告だが、学生の書いた修士論文には当時の研究状況、私の考え方などが色濃く残されている。研究は先輩後輩と引き継がれるために学生達の論文にはかなりのオーバーラップがあるがある意味理解しやすい内容にも思える。
ここに、大野研究室の博士論文、修士論文、発表会で用いたスライドを掲載する。GaN電子デバイスや無線電力伝送などに関心のある方の研究の参考になれば幸いである。

(研究の流れ)
着任当初の研究目標は漠然とGaNの電子デバイスへの応用であったので、まずは試作体制を構築することであった。幸い、酒井士郎研究室でLEDを作成していたので、エピとマスクを用意すればデバイス試作は可能となった。そこで、、当時から問題となっていた電流コラプスの解明と、ミリ波への応用を目標として。

(電流コラプス)
電流コラプスに関しては、GaAsでの経験から表面とバッファ層の2点が原因と予想していたが、自作のデバイスでは顕著なコラプスは起きず、なかなか区別が出来ていなかった。当初はこの頃は、周期バイアスシミュレーションとの照合を目指して周波数可変カーブトレーサーなどを検討させていた。
2004赤松、2007山岡、2011大森)また、Sパラメータ測定から仮想ゲート効果を確認しようとした。(2009湯浅)結果的には時定数がとてつもなく長いため周期バイアスの定常解に達するのも容易ではなく、また、Sパラメータの測定範囲にも入ってこないため、単純な時間応答測定が主流となった(2008乗松)。コラプスに関連して深い準位のSRHモデルをベースとする解析を行った。(2005岡田、2008岡田・博、2007石尾)
実測のデバイスでは、トラップ関連と思われる電流減少が頻繁に測定され、時定数が数100sと測定にも手頃であった。光応答などから1.9eVから2.6eVのホールトラップと予測されたが(2011黒田)、温度変化による活性化エネルギーがゼロ、と異常な結果であった。直接的な証拠はつかめないが電子の放出が起きにくいため、負帯電で発生する高電界におけるバンド間トンネルでi-GaN層にホールが発生し、それが回復の時定数を決めているというモデルにたどり着いた(2012細川)。

(デバイスシミュレーション)
大学での研究として、デバイスシミュレーションも注力する予定であった。しかし、深い準位を入れて収束するシミュレータが手に入らず、結局ほとんど実績が上がらなかった。その中で、表面起因のコラプスを、ゲートからの負電荷注入、界面準位、短チャネル効果を組み合わせることでニー電圧付近の電流低下が説明できた。(2010井川)

(GaN電子デバイスのミリ波応用)
NEC当時から、既にGaAsやシリコンLDMOSが使われている携帯電話基地局用デバイスへの参入は厳しく、むしろ未開拓のミリ波ICが向いていると思っていた。このテーマで総務省SCOPEの研究費が取れたので、EB露光での微細デバイスも一時試作した。しかしデバイスができたとしてもベースバンドのシリコンとの接続を高周波で行うことがネックとなることが予想されて。この問題を考えている際に龍谷大学の粟井先生との間でオープンリング共振器接続のアイディアが生まれた(2007菅、2008柏原、2009奥山、2010倉本、2011阿部)。その後米空軍の援助で60GHz帯での伝送も確認できた。最近はGHz帯での電力伝送に使うことを目指している。

(無線電力伝送、GaN SBD)
無線電力伝送は着任後すぐにJAXA、USEFなどのプロジェクトで送信用のGaN系FETの検討依頼があり、デバイスの信頼性という点でコラプス研究を担当した。その後、京都大学篠原教授からの受電用のGaNSBD試作依頼があり、GaN SBDの試作(2008伊藤、2009澤田、2010高橋、2012竹内、2012原内)と、オープンリングとの組み合わせによる非接触電力伝送の研究を行った。

(MISHFET,MOSFET)
エンハンスメントモードFETの実現のためMISHFETの検討を行った。当初の絶縁膜がリークの大きな酸化膜であったため特性的には問題が多かったが多くの知見が得られた、(2006菊田・博、2006松田潤) MOSFETに関してはコラプスに関連してMIS界面の研究から始め(2003菊田、2009野久保)、その後MOSFETも実現した(2009大室、2010中谷、2011祖川)

(プロセス技術)
オーミック(2004亀井、2006岩崎聡、2008原内着)、ショットキ(2004久保田、2011田上)、アイソレーション(2005高木、2009許)、ICPエッチング(2007松浦)。

(その他)
Cockcroft-Walton回路(2006松田義)、γ線照射の影響(2008亀岡)、PHセンサ(2010野崎)

*修士論文の公開について
修士論文は、生年月日等の個人情報が含まれなければ公開情報との認識である。著作権は大学に帰属している。
学部の卒論は、テストの答案用紙と同じ扱いで、非公開である。